ハルとオオカミ
なんて普通の会話をしながら、私の心臓は密かに速度を上げて高鳴っていた。
だって! こんな街中で! 五十嵐くんが隣を歩いてるなんて!
私の目に映る五十嵐くんは変わらないのに、そのうしろの光景が見慣れた学校風景ではなく街中ってところがもうヤバい。背景設定って重要。
ま、まるで放課後デート……とか思ってないから! そんな恐れ多いこと思ってませんからーー!
私の心の中が荒れ狂う一方、両手をポケットに入れて気だるそうに歩く五十嵐くんは、のんきに欠伸をしている。ううう、欠伸してても顔整ってるってどうなってんだ。
「はる、本屋で何買うの」
「好きな作家さんの新刊。テスト終わるまで我慢してたの」
「ふーん」
「五十嵐くんは好きな本とか作家さんいる?」
「んー、いない。つか、あんま本読まねえ」
「そっかあ……」
残念だ。改めて、私と五十嵐くんって全然違うタイプだなあと思った。共通の趣味とかあるのかな。……なさそう。