ハルとオオカミ


ちょっとしょぼんとしていると、近くから「あっ」という女の子の高い声が聞こえた。



「真央!」



……えっ。


声がした方を見ると、人ごみの間から私たちとは違う制服を着た数人の男女がこちらを見ているのが見えた。


「……おー、奈々未」


うしろの五十嵐くんが、「よー」と手を挙げて応える。ってことは、五十嵐くんのお友達?

ナナミと呼ばれた女の子は、嬉しそうにこちらへ駆けてきた。


あ……よく見たら、浦波高校の制服だ。五十嵐くんの出身中学である、東中の卒業生が多く進学する高校。

女の子は明るい茶髪を高い位置で結んで、しっかりとアイメイクをしている。彼女のうしろからぞろぞろとついてきている高校生たちもみんな同じように派手だ。


うちの高校にいたら、間違いなく浮くタイプ。

だけど彼女が五十嵐くんの横に並ぶと、なんだか違和感なく見えた。


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