ハルとオオカミ
甘酸っぱいりんごと青春のはじまり
「はる、おはよー」
翌朝、登校してきて鞄を机の上に置いていると、アキちゃんが私の席まで来て声をかけてくれた。
「……おはよう、アキちゃん」
へら、と笑って返事をすると、アキちゃんは心配そうに表情を曇らせた。
「……どしたの、なんか元気なくない?」
「んんーと……ちょっと昨日、色々あって」
「昨日? 昨日も五十嵐と帰ったんじゃないの?」
「そう……なんだけど」
「……あ! まさか五十嵐のやつ、はるに何かしたの!? 言ってみな、あたしが許さないから!」
「えっ!? ち、違う違う! そんなんじゃなくて……」
なにやら勘違いして闘志を燃やし始めたアキちゃんをなだめていると、 うしろでドン、と鞄を机に置く音が聞こえてきた。
そして、いつもはこのタイミングで挨拶してくれる声が聞こえてこないことに気づく。
……あ。
私はぎゅっと手のひらを握りしめると、うしろを振り返った。