ハルとオオカミ



「おはよう、五十嵐くん」



努めて笑顔で声をかけた私を、彼は不意を突かれた顔をして見つめ返した。


「あ、ああ……おはよ」

「昨日はどうもありがとう。五十嵐くん、あれから具合悪くなったりしてない?」

「いや……大丈夫。はるは?」

「私もおかげさまで大丈夫だよ。Tシャツは洗って返すね」

「あー、うん……」


それで私たちの会話は終わった。私は再び前を向いて、アキちゃんと顔を合わせる。


アキちゃんは明らかに『どういうこと?』という顔をしていた。私たちの会話は、昨日のことを知らない人が聞いたら何の話をしているのかさっぱり分からないだろう。


昨日はあれから気まずくて、ろくに会話もできなかった。

幸い、五十嵐くんがシャワーを浴びて少ししたら雨が止んだから、手短に挨拶だけして帰ったんだ。


今すぐ昨日のことを聞きたそうなアキちゃんに小声で「また昼休みに話すね」と言うと、ちょうど始業のチャイムが鳴った。


クラスのみんながばたばたと席についていく。担任の先生が教室内に入ってきた。


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