ハルとオオカミ
「あたしだってねぇ、もしジンが同じクラスにいたら、そりゃマジで恋してるっつーの!」
「…………」
「でもジンはあたしと歳も違うし、住んでるところも違うし、立場も違う! だから絶対叶わないけど、はるは違うじゃん!」
「…………アキちゃん」
「毎日会えるし話せるし、一緒にだって帰れる! 絶対叶わないとか、それこそ『絶対あり得ない』んだよ!」
「アキちゃん、みんなこっち見てるから……」
彼女はハッとした顔で口をつぐんだ。周りのクラスメイトはなんだなんだとこっちを見ている。アキちゃん、熱くなるとすぐ周りが見えなくなるから……。
彼女は恥ずかしそうに席に座ると、照れを誤魔化すみたいにゴホンと咳払いした。
「……だから。初めから絶対叶わないって決めつける必要ないんだよ。そりゃ、はるにとって五十嵐はめちゃくちゃ憧れの存在なのかもしれないけどさ。五十嵐は芸能人じゃないんだよ。むしろ、そんなに惚れ込んだ相手と日常的に話せたら、好きになっちゃうでしょ。当たり前だよ」
『当たり前』……。
そうだ、五十嵐くんはアイドルじゃない。手の届かない人じゃない。
私、そう思って彼と友達になったはずなのに、また同じ過ちを繰り返そうとしてる。