ハルとオオカミ


五十嵐くんは友達だ。だから本気で好きになるのは何もおかしなことじゃない。

確かに今のままの私じゃ、届かないかもしれない。でも、頑張れば届くかもしれない。そんな距離に彼はいるんだ。だから、彼に恋をするのは普通のこと。



……五十嵐くんは私にとって、なんの疑いも迷いもなく、心の底から格好いいって思えるひとで。そんなひとに恋ができたら。好きだって伝えられたら。


なんだかそれだけで、世界一幸福なことのように思えた。


「……アキちゃん」

「……なに?」


ぶっきらぼうな返事。彼女はまだちょっと怒った顔でお弁当を食べている。


「アキちゃんは、ジンさんとクラスメイトになりたかったって思う?」

「……わかんない。あたしはバンドやって歌ってるジンが好きだから。でも、はるを見てると羨ましいなって思うよ。めちゃくちゃ好きな相手に本気の恋ができるんだもん。そこでためらう意味がわかんない」

「……そっか。アキちゃん、大事なこと気づかせてくれてありがとう。私、逃げるのやめるよ」


彼女はまた照れたような顔をして、フンと唇を尖らせた。



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