ハルとオオカミ


ありがとう、アキちゃん。


私、今の日常を壊さないようにって、『いつも通り』に逃げるのはもうやめるよ。

私自身が今まで通りでいられないんだ。だから私と五十嵐くんの『いつも通り』は昨日崩れた。


なら、また新しくつくるまでだ。


今の私と、五十嵐くんの日常を。








放課後。

終業の号令をかけ終わったら、すぐに五十嵐くんに声をかけようと思っていたのに。


「ああそうだ、河名~。英語の鈴木先生が話があるって言ってたぞ」


号令のすぐあとに呼ばれたのは私で、呼んだのは担任の先生だった。


なんでこのタイミング、と理不尽に非難したくなったけど、今日返ってきたテストに関する何かかもしれない。しぶしぶ職員室へ向かった。


出来るだけ手短に済ませたい、と思っていたら、どうやら今回のテストで私は特に点数が良かったらしく、『よくやったなあ、さすがだなあ、この次もこの調子でいってくれ』と大体こんなことを言われた。


いや、嬉しいです! 嬉しいんですけど! それでわざわざ職員室に呼び出すのはどうかと思います……!


そう言い出したいのを堪えてひたすら先生の話を聞き、教室を出て十分ほど経った頃ようやく解放された。



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