ハルとオオカミ
その笑顔が本当に好きで好きで、胸がくるしかった。
好き。好き。少し掠れた低い声も、穏やかな笑顔も、彼を表すすべてが素敵。
望むなら、いつまでも隣でこのひとの横顔を見つめていたい。
だけどそのためには、今のままじゃいけないから。
ふいに会話が止んだとき、私は「あの」と切り出すと手のひらを握りしめて立ち止まった。
「昨日のこと、ごめんなさい」
すっと頭を下げると、五十嵐くんは虚をつかれたように黙った。しばらくして「……え」と戸惑ったような声が聞こえてくる。
「なんではるが謝んの。俺だろ、謝んなきゃいけないのは」
「……でも」
「俺が困らせたんだよ。お前は何も悪くない。顔上げろ」
ゆっくりと頭をあげる。見えた五十嵐くんは眉を寄せて、悲しそうな顔をしていた。