ハルとオオカミ
「五十嵐くん……」
「……俺はちゃんと昨日のこと謝って、話したかったよ。でもお前が何もなかったみたいに普通に話しかけてくるから、ムカついてそのあと話しかけなかった……のは、自分でもダセーことしたと思ってる。ごめん」
「ううん……今日ずっと逃げてて、ごめんなさい」
五十嵐くんは、『なかったことにしたくなかった』んだ。昨日、気まずい状態で解散したから。
向き合おうとしてくれてたのに、私が目を背け続けたから……。
「ごめんな。昨日」
西日が五十嵐くんの背中に向かって差している。
オレンジを孕んだ赤髪と白いシャツが、私の目に焼き付く。迷いのないハッキリした声で、彼は言った。
「はるは俺とも、俺が今まで関わってきた奴らとも違うから……慎重にしてるつもりだったけど、昨日はついやりすぎた。嫌だっただろ」
「……嫌っていうか……その、」
「いいよ、わかってる。昨日会った奴らのこともそうだけど、はるには合わないことのがやっぱり多いんだよ。俺といるとどうしてもお前に嫌な思いさせると思う」
彼が話してくれる言葉を聞きながら、私は焦りを感じていた。
なんだか話の雲行きが怪しい。
『はるは俺と違う』、『はるには合わない』、『嫌な思いさせる』から。それで……?