ハルとオオカミ
……完全に油断していた。
即興で席替え用のくじを作る先生を手伝って、ふうと息をついて自分の分を引いた結果……。
「……あれ。もしかして前、河名さん?」
わたしのうしろ、いがらしくん。
黒板に書かれた番号と、手元の紙を何度も確認する。
間違いない、この席だ。そして後ろは、五十嵐くんだ。
全くの予想外で、彼の言葉に反応することができない。
去年も何度か席替えがあったけど、五十嵐くんとは悲しいくらい近くの席になることはなかったのに。
いきなり前後の席だなんて、聞いてない……!
「……河名さん? 大丈夫?」
「……ハッ」
「ハッて。大丈夫かよ。俺が後ろなのそんなにショック?」
「!? そ、そそそそんなことないよ! 違うちがう! ただ、今までなかったからちょっとびっくりしただけで……!」
「あー。そういや、今までこんな近くなることなかったな」
「ね。あはは……よ、よろしくね」
「んー」
あはははと笑いながら平静を装って席に着く。ただし心臓はバックバクだ。