ハルとオオカミ
「……よくわかんね、俺のこと」
五十嵐くんが目を見開いてじっと私を見つめているのに気づき、ハッとした。
そ、そんなに仲良くないのに知ったかぶって、キモイ奴だと思われたかも……!
「わ、わかるっていうか……こ、この一年、私なりに五十嵐くんを見てきてそう思ったというか。勘違いだったらごめんなさい! 忘れて! とにかく改めてお礼言いたかっただけなんです!」
慌てて弁解して彼の様子を伺う。
五十嵐くんは不思議そうに私を見つめていたけど、やがて八重歯を見せて明るく笑った。
「勘違いじゃないよ。俺、別に喧嘩強くねえし。クラスのヤツのことちゃんと見ててスゲーな。さすがいいんちょー」
う、うひゃああ……。
目の前の笑顔が眩しすぎて、呼吸が止まった。
これがよくアキちゃんが言う、『推しが尊い』という感情ですか? 守りたい、この笑顔。