ハルとオオカミ



引くどころか褒めてくれるなんて、五十嵐くんはなんていい人なんだ。


委員長として五十嵐くんを気にかけてたっていうより、五十嵐くん観察日記でもつけられそうなほど毎日五十嵐くんを見つめてただけなんだけど……。主に私情で。

そんなこと知る由もない五十嵐くんは、「実際あのとき喧嘩沙汰になんなくてよかったわー」と言って可愛く笑いかけてくれる。


それからも他愛もない話をして、気付いたら家の前だった。


五十嵐くんはなるべく話を続けようと気遣うわけでも、かといってずっと沈黙が続くわけでもなく、とても話しやすかった。


こんなに長い時間、彼と話をしたのは初めてだ。話したいことがあったら話す、というような気の抜けた感じが心地よくて、彼らしいと思った。



私が家に入る直前、五十嵐くんは軽く手をあげて言ってくれた。



「また明日、河名さん」って。




「…………うああああーーー!!」


家の中に入った瞬間、こらえきれずに叫んだ。


リビングにいたお母さんの「何事!?」と驚いた声がする。私はそのまま玄関先に座り込んだ。



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