ハルとオオカミ



『河名さん』


一見不良みたいな彼が、毎回丁寧にそう呼んでくれるのが好き。


話してみたら案外言葉は柔らかくて、よく笑うところも好き。まっすぐに前を向いている、鼻筋がスッと通った綺麗な横顔が、不意にこちらを向いて目が合う瞬間も好き。


彼のぜんぶに、おかしなくらい惹かれる。目が合うたびに、ああ、このひとだって思う。


私の『いちばん素敵』は、ぜんぶこのひとに捧げるものだ。



「……格好良すぎる……」



前後の席になって、放課後勉強教えて、ふたりで帰って。


こんなに贅沢していいのかな。絶対近いうち罰が当たっちゃうよ。


でも、たとえ罰が当たったって、きっと今日のことを想えばそれだけで生きていける。一生分の幸福をもらった気分だ。


5分ほど経ってようやく心が落ち着いてきて、ご飯を食べた。


ああ、今日の五十嵐くんを思い出すだけでご飯が美味しい。やっぱりアイドルは幸せを与えてくれる。


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