ハルとオオカミ
「楽しみなのはわかるけどさ。もうすぐ中間テストあるし、ちゃんと授業聞きなよ」
「わかってるよー。けどさあ、ライブの旅費稼ぐために、最近シフト入れまくっててさあ。授業超眠い」
アキちゃんはジンさん、もといそのバンドに貢ぐお金を稼ぐため、バイト三昧の日々を送っている。だから勉強がおろそかになりがちで、こうして私が教えることが多い。
「いーいアキちゃん。ここが現在完了で、だからこの単語が過去分詞になってるの。わかる?」
「……わからん……」
「ジンさんで占めてる頭の容量をちょっとだけ英語に回して?」
「無理。昨日次のシングルのMVが情報解禁されてそれどころじゃない」
「アキちゃーん!」
「だってさあマジで次のMVヤバいんだって! ジンのビジュアル神だから! マジで!」
はるも見て!? と言って、アキちゃんはスマホを取り出すと、課題そっちのけで私にMVの動画を見せ始めた。もうすぐ始業時間なんだけどな……。