ハルとオオカミ
そんな五月中旬、私はホームルームの時間に委員長として教卓の前に立っていた。
「それでは……6月のはじめに行われる体育祭に向けて、クラスの旗と垂れ幕を作ります。去年もやったと思うので概要は省きますが……」
生徒会から渡されたプリントを見ながら、クラス旗について説明する。
うちの高校では毎年6月のはじめに体育祭があって、紅白に分かれるだけでなくクラスで競ったりもするから、各クラスで自由にクラス旗と垂れ幕を作成するんだ。
「……ていう感じで、クラス旗をやるひとと垂れ幕をやるひとで分かれます。質問ある人いますか?……はい、じゃあ作業はじめてくださーい」
簡単に指示を出すと、一斉にみんな席を立ち始める。机を下げて、作業するスペースを確保していった。
クラスメイト達がわいわい話し合いながら旗や垂れ幕を囲む中、私はひとり、教室を出て行こうとする人影を発見した。