ハルとオオカミ
「五十嵐くん。どこ行くの?」
「……げ」
見つかった、という顔をして五十嵐くんが振り返る。
私が委員長である限り、クラス行事からサボることは許しません。
じっと睨むように見つめると、五十嵐くんは面倒そうに頭をかいた。
「……めざといな」
「当たり前です。去年もそうやってサボろうとしたでしょ」
「うん。で、今みたいに河名さんに見つかった」
「……懲りないね」
呆れた顔をして言うと、五十嵐くんは気が抜けたように苦笑いした。
「毎回見つけてくれんのが面白いんだよ。ごめん、参加するわ」
……そんな可愛く笑ったって駄目だ。心のアイドルだからって、委員長として贔屓はしないんだから。
五十嵐くんがクラス旗の方へ歩いていく。なんだ、自分がどっちの担当かはしっかり聞いてたんだ。サボるつもりはあまりなかったのかも……?
なんだかしてやられたような、納得いかない気持ちでいると、私たちの会話を見ていたらしいアキちゃんが、筆を片手にニヤニヤしていた。
彼女は最近あの顔ばっかりだ。表情筋を制御しようと奮闘している私を見習ってほしい。