ハルとオオカミ


それからしばらくは、みんな順調にクラス旗と垂れ幕づくりに励んでいた。


五十嵐くんもクラス旗づくりにちゃんと加わってるみたいで、クラスメイトたちもぎこちなくではあるけど彼と会話できてるようだからよかった。


そんな風にちらちら五十嵐くんの様子を伺いながら、私も垂れ幕づくりをしていた、そのときだった。


――パシャッ……。


近くで水音が聞こえて、一瞬、教室内に沈黙が落ちた。次いで、ざわっと辺りが騒がしくなる。


見ると、クラス旗の上に赤の絵の具が落ちて、三分の二が真っ赤に染まっていた。


「うわ、マジかよ!」


男子のひとりが声を上げる。


赤の絵の具が入っていたのだろう缶が、すぐそばに転がっていた。


クラス旗を作っていた面々はみんな顔をしかめている。


「やばくね?」

「誰が修正するんだよ、これ」

「今までの作業が無駄になっちゃったー」

「つか、誰がやったんだよ」


クラス中が騒がしくなってきた。


同時に犯人探しも始まって、倒れた缶のすぐ近くに座っていた女子のひとりが顔を青ざめさせた。……あ、きっとあの子だ。


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