ハルとオオカミ
「い、五十嵐くんじゃないよ」
勇気を出して声を出した。
委員長だ、私は委員長だ。クラスをまとめる役目がある。
そう心の中で自分に言い聞かせて男子を見つめた。
「誰がやったか探すんじゃなくて、先にクラス旗……」
「あー、そっか。委員長、最近五十嵐がお気に入りだもんなあ」
男子の言葉に、思わず口を閉じた。心臓が嫌な感じに音を立てる。
ニヤニヤと笑って男子がこちらを見ていて、背中に冷や汗が伝った。
「かばってあげんの、やさしーなあ。もうホレちゃった?」
委員長として五十嵐くんをひいきしてたつもりはないけど、誤魔化せてる気になってた。
周りから見たら、私が五十嵐くんを特別に思ってるってバレバレだったってこと?
身体は凍り付いたみたいに冷たいのに、顔が一気にかっと熱くなった。
恥ずかしい。私は委員長としてこの場を収めたいだけなのに、そんなふうに思われちゃうんだ。