ハルとオオカミ
授業の終わりを告げるチャイムが遠くに聞こえる。
号令をかけてひとまずこの場をどうにかしなきゃと思うのに、上手く思考が働かない。
「俺がやった」
情けなくも唇を噛んでうつむいていると、五十嵐くんの淡々とした声が聞こえた。
……え?
顔をあげると、五十嵐くんが感情の読み取れない顔で男子を見ていた。
「俺がやった。だから、旗の修正はやっとく。……委員長、チャイム鳴ったから号令かけて」
言われて、ハッとする。
なんで五十嵐くんが、と思いながらも、今は号令かける方が先決だった。
「……起立」
動揺して何もできなかったのが悔しくて、思わず声が少し低くなった。
不穏な空気にクラスのみんなが表情を曇らせたまま、授業は終わった。