ハルとオオカミ
君と飲むココアは格別に美味しい
五十嵐くんは、なんで『自分がやった』なんて嘘をついたんだろう。
犯人探しが始まって、面倒くさくなったとか?
私がちゃんとクラスをまとめられなかったから、見かねて助けてくれたとか?
……でも、こんなのおかしい。
ちゃんと五十嵐くんがやったんじゃないって説明しなきゃ。誤解を解かなきゃ。
せっかく五十嵐くんがクラス行事に参加して、クラスに馴染むチャンスだったんだから。
放課後、呼び出しを受けて生徒会から体育祭やクラス旗の話を聞きながら、今日のことを思い返していた。
あのあと、掃除とかホームルームとかでタイミングが合わず、結局五十嵐くんと話ができなかったんだよね。
五十嵐くん、『修正はやっとく』なんて言ってたけど、大丈夫なのかな……。
彼のことだから、たぶんひとりでやる気なんだろう。
「…………」
うーむ。
話し合いが終わって、教室へ戻るために廊下を歩く。
終業からまだそんなに時間は経ってないのに、校内は静かだ。
グラウンドから運動部の声も、吹奏楽部の演奏も聞こえてこない。