ハルとオオカミ
「……あ、テスト期間か」
よく考えたら、十日後は中間テストだ。
この時期になると、部活動は徐々にお休みになっていく。
みんな学校が終わったら家に帰って勉強するか、自習室に行ってるし。だからこんなに静かなんだ。
自分の教室の前に着いて、ドアの窓から教室内をちらりと覗く。
中の様子を確認すると、そのまま近くの自販機へ向かった。
自販機で飲み物を買って、もう一度教室へ戻る。今度こそドアを開けた。
「五十嵐くん」
声をかけると、教室のうしろ側につくったスペースに座り込んで、作業していた五十嵐くんが振り返った。
「……河名さん」
五十嵐くんの前には、一部が真っ赤に染まったクラス旗と絵の具が置かれている。
教室内には彼一人だ。私はできるだけ笑顔を努めて、彼の横に座り込んだ。