ハルとオオカミ


「……五十嵐だ」

「昨日サボったくせに始業ギリギリだな」

「不良こわーい……」


クラスメイトたちが遠巻きに彼を見て、コソコソと話をする中、当の本人は意にも返さず自分の席へ歩いていった。


私は自分の席から、その挙動をひとつも見逃さない勢いでじっと見つめる。


気怠そうな背中、ふわふわした猫っ毛の赤い髪、切れ長の大きな瞳、白くて綺麗な肌、シルバーのピアス、不機嫌な表情。



五十嵐 真央くん。



私の、心のアイドル。







一年前の春、高校に入学して一日目、教室で五十嵐くんを初めて見た。


彼は入学式をサボってお昼ごろに学校に来た。入学早々に真っ赤な頭の見た目完全不良な同級生を見て、クラスはざわついた。


クラスメイトから剣呑な目を向けられながらも、五十嵐くんは全く気にした様子も見せずに教室を見回した。

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