ハルとオオカミ
『…………』
席が前後で中学も同じだったアキちゃんとご飯を食べていた私は、彼の姿を見た瞬間、お箸を持つ手が動きを止めた。
――この人だ。
自分でもよくわからないのだけれど、そう思った。『ひと目見てビビッと来た』というのはこの瞬間のことをいうのだと思う。
なんていうか、不思議なくらい『あ、この人だ』って思った。自分にとって、この人より素敵だと思う人はきっとこの先現れない。疑いなくそう思えるくらい、『しっくり』来た。
『――あの』
気付いたら、声をかけていた。五十嵐くんの登場で一瞬ざわついたあと、静まり返っていた教室内に、私の声はとてもよく響いた。
彼がゆっくりとこちらを向く。綺麗な茶色い瞳が、私をとらえた。
『……座席表なら、教卓の裏にあります』
『…………』
私の言葉を聞いて、五十嵐くんは前を向いた。彼は多分、自分の席がわからず教室を見回していたのだろうと思ったのだ。