ハルとオオカミ
「わああ! ごっ、ごめんねはるちゃん! 私なんかが偉そうに……っ」
「あー大丈夫大丈夫。今この子ちょっと涙もろくなってるだけだから」
苦笑いしながらアキちゃんが私の背中をさする。涙をこらえようとするけど、止まらなかった。
「ごめんなさい」と謝ってくれる鈴菜ちゃんに、涙を拭いながらふるふると首を横にする。
「ちがうの、鈴菜ちゃんのせいじゃないよ」
「ほんとう……?」
「うん……鈴菜ちゃんの言うとおりだなあって思ったんだ。私、五十嵐くんと話してて楽しかったの。五十嵐くんも、そう、見えた……?」
「……うん。見えたよ。私たち最近まで見たことなかったもん、五十嵐くんのあんな明るい顔……。本当に仲いいんだなあって思ったよ。五十嵐くんを笑顔にできるの、この学校ではるちゃんだけだよ」
その言葉に、ますます涙があふれた。
そうだよ。私、五十嵐くんと仲良くなりたかったから話しかけたんだ。
はじめは声が聞きたくて。
どんなふうに人を見て、どんなふうに話すのか知りたかったから。