ハルとオオカミ
ーー『あんたは優しいから勘違いしてんのかもしれないけど、俺は別に今のままで大丈夫だから』
私は勘違いしてるのかもしれない。余計なお節介かもしれないね。
だからこれは、五十嵐くんのためじゃなく、私のわがままで言うよ。
みんなに、五十嵐くんのこと知ってほしいって。
「委員長じゃなくて、『河名はる』としてそう思います」
口に出した瞬間、私の中で何かが吹っ切れた感じがした。
ああ、すごく簡単なことだったんだ。
「私たちから伝えたいことは以上です。聞いてくれてありがとう」
最後に鈴菜ちゃんとふたりで頭を下げた。
みんながばらばらと解散していく中、「話してくれてありがとー」という声も聞こえて、鈴菜ちゃんと顔を見合せて笑いあった。
ふいに教室のうしろ側のドアの方を見ると、ドアに寄りかかって廊下に立っている人の姿が見えた。
目にした瞬間、私は近くのドアから教室を飛び出した。