ハルとオオカミ



……ああそっか、確かに五十嵐くんってそういうひとだった。


他人に何言われたって自分を変えたりしない。だから、他人に私との関係について何言われたって、彼自身が気にしたりはしないんだ。


だけど今回は、私がいたから。


私が他人に言われて嫌な思いをしていたから、彼はあの場を嘘をついてまで収めたし、私のことを遠ざけた。



私が憧れた五十嵐くんって、そういうひとだ。



「……私は、五十嵐くんと仲良くなりたくて今までずっと話しかけてたんだよ。委員長だからとか、そういうのじゃなくて……。だから、こんな風に避けられるのは嫌だ。私たちのこと何も知らない人に何か言われたって、今はもうどうでもいいって思うし、傷ついたりしないから」


手のひらをぎゅっと握りしめる。


五十嵐くんは真剣な瞳でまっすぐに私を見つめて、私の言葉を待っている。


その目が、初めて私をとらえたときのものと同じで、涙がこぼれそうになった。



やっぱりこのひとが、私にとっていちばん素敵だ。



「私と、友達になってください」



涙で視界が歪む。だけど、私の言葉を聞いた五十嵐くんが、呆気にとられた顔をしたのはわかった。


< 79 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop