ハルとオオカミ
……ああそっか、確かに五十嵐くんってそういうひとだった。
他人に何言われたって自分を変えたりしない。だから、他人に私との関係について何言われたって、彼自身が気にしたりはしないんだ。
だけど今回は、私がいたから。
私が他人に言われて嫌な思いをしていたから、彼はあの場を嘘をついてまで収めたし、私のことを遠ざけた。
私が憧れた五十嵐くんって、そういうひとだ。
「……私は、五十嵐くんと仲良くなりたくて今までずっと話しかけてたんだよ。委員長だからとか、そういうのじゃなくて……。だから、こんな風に避けられるのは嫌だ。私たちのこと何も知らない人に何か言われたって、今はもうどうでもいいって思うし、傷ついたりしないから」
手のひらをぎゅっと握りしめる。
五十嵐くんは真剣な瞳でまっすぐに私を見つめて、私の言葉を待っている。
その目が、初めて私をとらえたときのものと同じで、涙がこぼれそうになった。
やっぱりこのひとが、私にとっていちばん素敵だ。
「私と、友達になってください」
涙で視界が歪む。だけど、私の言葉を聞いた五十嵐くんが、呆気にとられた顔をしたのはわかった。