ハルとオオカミ

案の定、教卓の後ろ側に回った五十嵐くんは、座席を手に取ってこっちを向いた。目が合ってドキッとした。


『ありがと』


短い言葉だったけど、彼の声を初めて聴いた私は沸き起こる感動に打ち震えた。声まで素敵だ。ハスキーでちょっと特徴的な、ちょうどいい高さの声。


もっと聞きたい。できることならあとでお話ししたい。




『相変わらず偉いねえ、はる』


五十嵐くんが座席表を見て自分の席に座る様子をじっと見ていたら、横からアキちゃんが頬杖をつきながら言った。


『はる、中学のときも委員長とかしてたもんね。あんな不良にも声かけられるのすごいわ』

『…………今のは、ちょっと違うよ』

『違うって?』

『ううん』

『……よくわかんないけど……。それにしても、ここ結構偏差値高いのに、あんな不良も入学してんだね。確かに校則は緩いけどさ……あんなのとクラス一緒とか、怖いんだけど』


私は、確かに小学生の頃から万年委員長の優等生キャラだ。自分に合ってると思うし、人の役に立てるのは嬉しい。


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