ハルとオオカミ


その後は家まで送ってもらって色々お話ししたから、『はる』って呼ばれるのにも少し慣れたような気がしてたけど……。


ぜんぜんそんなことない。

何度聞いたって死にそうになる。嬉しさと恐れ多さと愛しさで息がつまる。心の中で何かが暴れて、『うわー!』って叫びだしちゃいそう。


「友達になれてよかったね」


アキちゃんがそう言って笑う。私は手の甲で顔の熱を冷ましながら、小さな声で「うん」と言って頷いた。


今まで私は、彼とクラスメイト以上になることを避けてきた。


そこから勇気を出して踏み出すことにしたんだ。


『ただのクラスメイト』だった五十嵐くんと、『友達』の五十嵐くんは私の中で全然違う。


憧れの人と友達になれたって事実だけでも感激するほど嬉しいのに、これからは友達という新たな関係で私の日常が始まるんだ。


ワクワクとドキドキで胸がつまっておかしくなりそう。


少しずつ。少しずつでいいんだ。

これからも、彼ともっと仲良くなりたい。






昼休み、先生に呼ばれて特別教室棟へ向かっていると、中庭を横切る渡り廊下の近くで五十嵐くんを見かけた。



< 87 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop