ハルとオオカミ


委員長として、人として、クラスメイトが困ってたら誰であろうと助けてあげたい。そういう純粋な気持ちでこれまで他人に親切にしていたけど、今回のはちょっと違った。


純真な親切心だけじゃない。下心がある行動だった。


『優等生』として生きてきた私にとって、それはとても大きなことだったんだ。







そんな出会いから一年経った今、五月のはじめ。


二年生に進級して、私は去年に続き委員長になった。

そして運よくまた、五十嵐くんと同じクラスになれたんだ。


「うあー! 全っ然わかんないんだけどっ! はるー、答え写させて!」

「だめー」

「はるうううう」


ホームルーム後、泣きながら課題を進めるアキちゃんを厳しく見守っていたら。



「河名さん」



うしろからかけられた声に、ドキリとする。

どんなに教室が騒がしくても、この声だけは絶対に聞き逃さない自信がある。


「五十嵐くん」


振り返ると、眠たそうな顔をした五十嵐くんが立っていた。

途端に私の視界がきらきら輝き始める。


「さっき担任が言ってた六限のホームルームって何やんの?」

「あ、この前の課外学習の振り返りだよ」

「あー……わかった」


五十嵐くんは一瞬何かを考えるような素振りをしてから、自分の席へ戻ろうとする。

それを見て私の委員長センサーが働き、すかさず「五十嵐くん」と呼び止めた。


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