ハルとオオカミ
「はるは勉強しなくていーの」
不意に尋ねられて、彼のふわっとした赤髪の毛先とか、シュッとした輪郭を眺めていた目をぱっと見開いた。
「私?」
「いっつも先生から雑用させられてるけどさ。テスト前くらいははるも勉強すべきだろ。つか、センセーもいくらはるが成績いいからって頼むなよって話だけど。たまには断ればいいのに」
「うーん……確かにそうかもしれないけど。私を信頼してせっかく頼んでもらえたんだから、できるだけ断らずにやりたいんだよね」
「真面目だなあ」
五十嵐くんがシャーペンを動かしながら苦笑いする。私は小さく笑って、机の上の資料の束に触れた。
「真面目っていうか……プライドの話かも。いくら地味な雑用でも、任されたお仕事には変わりないから。仕事をちゃんと丁寧にこなせるのって、『格好いいこと』でしょう?」
私はべつに、お堅く真面目だから委員長をやってるわけじゃない。ただ、自分が思う『格好いい姿』を目指してるだけだ。