王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


この国にとって、私なんてどうなってもいい存在なはずなのに、ジュリアさんもガイルと一緒に私を探し回ってくれたらしい。

雨に濡れながら。

申しわけなくなり、「風邪をひかないようにあたたかくして寝てください」とジュリアさんの手を握ると、複雑な表情を向けられた。

「本当に……クレア様といいガイル様といい、天然な人タラシですよね。怒ってたのに調子が狂います」

そう言ったジュリアさんは私の手を離させると「私よりご自分の心配をされてください」と少し笑った。

「シオンさん、まだ残ってますしどうせこれからお説教でしょう? 手当て中もずっとあの人の不機嫌オーラがビシビシ伝わってきてましたし」

ジュリアさんがこそっと言ってきたとおり、他のみんなは各々部屋に戻ったのにシオンさんは未だソファに座ったままだ。

でも、私もきちんと謝りたかったからちょうどいい。

「今日はありがとうございました。また、お世話になります」

頭を下げると、ジュリアさんはまた複雑な顔をし……最後に「こちらこそ」と笑った。

パタンとドアを閉じ……そして、ゆっくりと振り返ると、すぐにシオンさんと目が合った。
私が振り向く前からこちらを見ていたらしい。

いつものシオンさんらしくないピリッとした雰囲気が部屋に流れていた。


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