王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
足を組み、背もたれに背中を預けていたシオンさんが、スッと立ち上がり私に近づく。
そして、隣まで来ると私の腰に手をあてた。
見上げると、無表情の瞳と目が合う。
怖いとは思わなかった。
むしろ、傷ついたように見え、もしかしたら私の勝手な行動のせいだろうか……と思うと胸が痛んだ。
「こっちにおいで。少し話そう」
「……はい。私も、聞きたいことがあるので聞いてもいいですか?」
シオンさんは「もちろん」と言いながら私を歩かせ、ベッドに座らせた。そして自分はその隣に腰を下ろす。
ふたりきりの部屋は静かだった。
「ごめん。緊張させて」
「え……」
突然言われた言葉に驚くと、シオンさんは情けないような笑みを浮かべて私を見ていた。
「クレアを怖がらせたいわけじゃないんだ。ただ……どうしても、思うことがあって」
「あ、いえ……。悪いのは私ですから」
「クレアの話から聞くよ。俺に聞きたいことってなに?」
シオンさんが意識して雰囲気を軽くしてくれたおかげで、緊張が解ける。
きっと面倒を起こした私に怒りたいと思うのに……本当に優しい人だ。
こんな人が王子だから、きっとグランツ王国は平和なんだろう。
少しの間、何も言わず見つめてから……そっと口を開く。
質問の重みとは裏腹に、その言葉はすんなり声になった。
「どうして、騎士なんて嘘をついたんですか?」
シオンさん……シド王子も、私がなにを言うのかわかっていたのか、動揺した様子は見せずにふっと笑った。