王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「やっぱりバレてたんだ」
「ずっと、おかしいとは思っていました。騎士団長にしては、色々なことを自由にしすぎているし、エスコートとか他の振舞もとても優雅だから。
確信したのは、今日ですけど」
あの男の人たちの態度でわかった。
テネーブル王国への攻め入りのとき、あんな軽装できたシオンさんを、まさか王子だとは思わなかった。
だって、王子自ら率先して危ない場所に行くなんて、テネーブル王国ではありえなかったから。
でも……この国で過ごすうちに、この国の考え方がわかって、ありえないことではないんだと知った。
一番後ろに隠れるんじゃなく、王子自らが先頭で指揮をとる。
それを当たり前にできるこの国がとても好ましく思った。
「シド王子……とお呼びすればいいですか?」
聞くと、シド王子は困り顔で笑う。
「いいよ。呼び方なんてなんでも。ただ、距離感は今まで通りか、もっと近くがいいけど」
そう笑ったシド王子が、ひとつ息をつき……静かに話し出す。
「第二騎士団の団長っていうのも嘘じゃないんだ。国王に頼んで兼任させてもらってる。剣の腕を鍛えるには実践が一番だろうって許してもらって以来。もう二年になる」
「兼任……そうなんですか」
テネーブル王国では考えられない事実に驚くと、シド王子は「シオンっていうのは、デコラシオンからとった」と教えてくれる。
「デコラシオン?」
「この国で個人に与えられる勲章だよ。とくに、騎士団に入ってる者はそこを目指してるヤツも多い。もちろん、それ以外でも功績を残した者に与えられる。学問でもなんでも、位とか関係なく」
「……素敵な制度ですね」
私の言葉にシド王子は微笑み、目を伏せる。