王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「俺は、王と第一王妃の息子だから、まぁ、順当に考えれば王位第一継承者って立場になる。でも、その立場を狙うヤツは他にたくさんいる。
たとえば、第二王妃、第三王妃の息子とかね」

私は王位継承については詳しくない。
一応、王族ではあるものの、そんな立場に立たされたことがないから。

でも……想像することはできた。
そういう立場や権利に異常に執着する人間はいるから。

シド王子は、肩幅ほど開いた足にそれぞれ肘を乗せ間で手を組む。
前屈みになったシド王子の表情は黒い髪で隠れてしまい、私の場所からだと口元しか見えなかった。

笑みを浮かべている口元がゆっくりと動く。

「俺がいなくなれば、王位を継承する権利は当然そいつらに移る。第二王妃たちも必死だったんだろ。
ガキの俺に、毒を飲ませようとしたり事故に見せかけて怪我を負わされそうになったり……散々だった」
「え……」
「俺の母親は物心つく前に他界してたから、気づいたら俺の周りにいる女はそういうヤツらばかりになってて……女ってみんな怖いもんなんだって思い込んで、ベッドの中で震えてた時期もあった。
恋愛感情どころか、母性本能とかも本当にあるもんだか信じられなかった」

最後にぼそりと「子どもの頃は、女ってだけで怖かった」ともらされた言葉に、胸が突き刺されたみたいに痛んだ。

あまりに衝撃的な事実を告げられ、息を呑む。

だって……いくら王位が欲しいからってそんなことを……?

言葉もなくした私に、シド王子が続ける。


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