王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「ここ数年、そろそろ結婚してもいい歳だからか、やたら女が寄ってきてうんざりしてたから。それに、小さな頃のトラウマもあったし、誰が相手でもどうしても入れ込めなかった。
そしたらあいつが、そんな女ばかりじゃないって言ってきてさ。正直、嘘だろと思いながら聞いてたんだ」
楽しそうな横顔で、シド王子が続ける。
「〝俺の知り合いに、すげー芯が強くて真っ直ぐな女がいる〟って、あいつは言ってた。〝あいつは多分、惚れ込んだ相手なら自分の利益なんか放り出して命までかけて守る女だと思う〟って」
「……ガイルは私を買い被ってるんですよ」
ため息を落とすと、シド王子はそんな私を見て微笑む。
「〝でも、立場が複雑で自分は恋なんかしちゃいけない存在だって思ってるから、そこが心配だ〟とも言ってた」
その言葉にハッとする。
私がそう思っていることを、まさかガイルが気付いているなんて思わなかった。
私が子どもを産み、この血を引き継がせることを国は望んでいなかった。
だからあの塔に閉じ込め、誰とも接せられないよう監視までしていたくらいだ。
そういう国の思惑はわかっていたから、私も誰とも恋をしようとは思わなかった。
だって、もしも恋をして、万が一、子どもができたら……その子どもも私と同じ目に遭わせてしまう。
私は、大切に育ててくれた母がいるから、自分の立場を不幸だとは思わない。
それでも……自分の子に同じ目に遭って欲しくはなかった。
そういう意味で『恋愛なんて、私にはできない』って言っていた私に、ガイルは『大丈夫だって。おまえは確かに性格はちょっと意地っ張りで面倒くせー部分があるけど』っていつも笑ってたけど……。
本当は、私の気持ちを知っていたんだ……。
全部、知った上で、気付かないふりして明るく笑ってくれていたんだ。
いつでも、ガイルのくれる優しさは温かくて胸の奥がじわっと熱を持つ。
涙が浮かばないようにと唇を引き結んでいると、シド王子が言う。