王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「暴動を起こしていたヤツらにはもう話をつけた。目的が達成された以上、もう王族の消息にはこだわらないと約束させた。
だからもう、クレアはテネーブル王国の王族として責任を果たす必要はない」
強い眼差しを受け……呼吸が震えるようだった。
「ごめんなさい……」
「まぁ、そうは言ってもクレアは誰かのためってなればどうせまた自分を差し出しちゃうだろうけどね」
謝り涙を溢れさせる私に、シド王子は今までとは違い、軽いトーンで笑う。
「だから、ずっと俺の隣にいるといいよ。そしたら俺が、クレアが自分のこと軽視できなくなるくらい、大事にするから。
身を持って自分の存在がどれだけ周りにとって大事かを知ればいい」
「……ずっと?」
涙声で聞くと、すぐに「ずっと」と即答された。
「今のクレアが出来上がるまでに十八年かかったなら、十八年かけて俺が変える。それでも無理だったらまた十八年。時間はたくさんある」
「……あっという間に歳とっちゃいますね」
壮大な計画に、思わず呆れて笑うとシド王子が安心したように眉を下げた。
そして、最後に残った涙を拭う。
「クレアにはいつだってそうして笑っていてほしい」
たくさん泣いたし、きっとひどい顔をしていると思う。
それでも、こんな風に言ってくれることが嬉しくて微笑んでいると……不意に、表情を真剣なものに変えたシド王子に見つめされ、胸が大きく跳ねる。
声も出せないまま抱き寄せられ、シド王子の肩口に鼻がぶつかる。
背中に回った腕にぎゅっと抱き締められ戸惑っていると、シド王子がなにかに耐えているような苦しそうな声で言った。