王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「クレア……」
抱き締める腕が緩み、ふたりの間に距離ができる。
気付いてしまった自分の気持ちにひとりドキドキしながらうつむいていると、シド王子の手が顎を持ち上げた。
こんな近い距離で……と戸惑う暇もなく、近づいてきたシド王子に唇を塞がれる。
シド王子のキスはいつだって突然で心の準備もさせてくれない。
触れていた唇が離れ、はぁ……と緊張を吐き出すと、そこにもう一度キスされ……口の中になにかが入り込んできて驚く。
「シド……ん、ぅ……」
温かく柔らかいものが私の舌に重なり、そこを舐めるように動く。
入り込んできたものがシド王子の舌だと気付いた途端、身体がびくっと跳ねた。
なにをされているのかがわからなくて目も閉じられずにいる私の後頭部にシド王子が手を回す。
そして私の頭を固定すると、角度を変えたシド王子に深く唇を合わされる。
「……んっ」
ずっと私の舌を絡め取るように動いていたシド王子の舌先が上顎をなぞると背中をぞくぞくとした感覚が下る。
あまりのことに、頭が追いつかずにパニックだった。
もうダメだと思い逃げようとするのに、頭に回った手がそれを許してくれず……続けられる深い口づけを受け入れるしかできない。
ふたりきりの静かな部屋にわずかに聞こえる水音が恥ずかしくてたまらない。
もらす吐息さえも食べられちゃうようなそんなキスに、頭がクラクラしてくる。
今日、中庭まで全力で走ったあとも酸欠でクラクラになったけど……あの時とは違う甘さを含んでいた。
それに、溺れそうになる――。