王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「は、ぁ……っ、シド、王子……」
「……うん。ごめん」
キスの合間に呼ぶと、ようやくシド王子が離れるから、はぁ……と息をついた。
それから、自分の指で唇に触れ……シド王子から隠れるようにうつむく。
だって……こんなキス、知らない。
今まで読んだどの本にも載っていなかった。
「今の……今のも、キス、ですか……?」
「ん?」
私の髪に鼻を埋めているシド王子に、未だドキドキとうるさい胸の前で両手を握りしめながら聞く。
「だって、あんなの本には……」
「ああ、載ってないかもね。クレアが読んでたのって、聞いてると子ども向けのものが多いみたいだし。あれ選んできてたのって誰?」
「ガイルですけど……え、そうなんですか? 子ども向け……?」
言われてみれば、文章も簡単だったし可愛らしい話が多かったけど……そういう本しか読んだことがなかったから、子ども向けだなんて疑ったこともなかった。
キョトンとして見ていると、シド王子は困ったように笑う。
「子ども向けの童話かな。クレアはお母さんが描いてくれた本を一番気に入ってたくらいだし、同じ傾向の本を選んだ結果ってとこだと思うよ。ちゅってキスしたら全部がハッピーエンドみたいな可愛い物語を。
それにあいつ、クレアの保護者気取りだから、あまり進んだ本は読ませたくなかったっていうのもあるかもね」
「進んだ本……」
進んだ本には、今されたキスみたいなことも載ってるんだろうか……。
その前に、そんな描写が出てくる物語って……と考え、顔が熱を持つ。
だから「そういう本、見てみたい?」という申し出を「いくら勉強でも、いかがわしいものはちょっと……」と断ると、笑われてしまった。
「そうかもね。それに、クレアには必要ない」
最後に「俺が全部教えてあげるから」とちゅっとキスされ……そのまま、自然ともう一度唇が重なった。