王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「ところで、ガイルは知ってたの? シド王子のこと……」

さっき、マイケルが当たり前のように口にしても、ガイルは特に驚いた様子を見せなかった。
だから聞くと、「まぁ、なんとなくだけどな」とあっけらかんとした顔で言われる。

「話しててもところどころおかしいなと思うところはあったし、周りのヤツらにそれとなく聞いてみてもおかしな態度とるから、よっぽどの立場なんだろうっていうのは見当がついてた。
昨日、シド王子だって聞かされて、ああなるほどなーって今までのことがしっくりいった感じだな」
「そっか……」

考えてみれば、ガイルは私よりも勘が鋭い。
私が気付いたことに気付かないハズがないか……と思っていると。

「でもなぁ。クレア。さっきのマイケルのプロポーズを聞いて思ったけど」

ガイルが珍しく難しそうな顔で話す。

「シド王子は正直、賛成しかねるなぁ」
「……ガイル。おまえ、俺にはクレアみたいな子が似合うってあんなに言ってたくせに、現実味を帯びた途端に意見変えるなよ」

立ったまま、厳しい眼差しを向けるシド王子にガイルが眉を寄せる。

「だってあの時はおまえが王子だなんて知らなかったからな」
「貴族付きの騎士よりいいだろ」
「立場的にはな。でも、結婚相手ってなると話は別だ。王族は色々面倒くさい」

はっきりと言ったガイルが、シド王子がなにか言うよりも先に続ける。

「俺の見張りに立ってる衛兵に聞いたけど、ここも王妃様方は結構ややこしい性格してるんだろ。王位継承がどうので。
そんなところに、クレアを簡単には預けられない」

シン……となったテーブルに、ジュリアさんが朝食の乗ったお皿を並べながら言う。

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