王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「まぁ、それはその通りですね。この国は王族と国民の関係もよく平和ですが、そこの確執だけは常に心配の種です。国王様も頭を悩ませておられる様子でした」
「衛兵の話だと、第一王子のおまえに相当なことしたらしいじゃねーか」
『ガキの俺に、毒を飲ませようとしたり事故に見せかけて怪我を負わされそうになったり……散々だった』
シド王子の言葉を思い出し、唇を引き結ぶ。
でも別に、それはシド王子が悪いわけじゃないし、なにも責めるような口調で言わなくても……と思いガイルを見ると、目が合ったのにすぐに逸らされてしまった。
ガイルらしくない。
「そういえば、国王様が留守にしているこの数週間で他の王妃様がなにかしら仕掛けてくるかもしれないと懸念してましたが何もありませんでしたね。
さすがに、この歳になればシド王子を精神的に崩すなんて無理だと諦めたんでしょうか」
次々にお皿を並べながら言うジュリアさんに、シド王子は「そうだと嬉しいけどね」と呟くように言う。
「まぁ、俺も今まではわざわざ事を大げさにしたくもないって見逃してきたけど……あっちがまだその気なら、黙らせる方法はある。
どっかの父親気取りの騎士がうるさいし、そのうち目に見えた決着をつける必要があるかもな」
そう、何かを含んだような言い方をしたシド王子が、マイケルから手を離しその顔を上から覗きこむ。
「今の話がマイケルくんにはどれだけ理解できたのかな」
そして、わざと挑発するように言い、睨みあげたマイケルに制裁の頭突きをもらうことになったのだった。