王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「まぁあいつも考えはあるみたいだし。ここの生活も楽しいしな。どうせいつか嫁に出すまでだし、心配くらいはさせろよな」
笑顔で言うガイルにどんな顔をすればいいのかわからなくて。
「私はガイルが剣しか愛せなくなったらどうしようってそっちの方が心配なんだけど」
結局出たのは、いつも通りの憎まれ口だった。
私の傍にいる必要なんてないのに………変わった男だ。変わってて……どこまでも温かい人だ。
「それに、シド王子はあの様子だとおまえがなにしでかしても怒ったりできなそうだしなぁ。目に入れても痛くないっつーか、そういうレベルの可愛がり方だし。
一方のおまえはおまえで、塔から出てみたら予想してた以上に危なっかしいし」
最後に「どう考えても俺がいないとダメだろ」とハハッと笑ったガイルが、ちらりと私に視線をよこし、それまでとは違ってニヤリとした笑みを浮かべる。
「しかしおまえ、シド王子とのこと全然否定しないな」
「えっ」
もうすっかりバレてるみたいだし、隠す必要も感じず普通に話していただけに、そんな風に言われて突然恥ずかしくなる。
「シド王子側の気持ちはなんつーかもう駄々漏れだったから今さらだけど。おまえもしっかり好きだったんだなぁ」
「だって……っ、その、あの人、私がいないとダメだって口癖みたいに言うから……。少し会えない時間が続いただけで人が変わったみたいに元気がなくなるってジュリアさんからも聞いてるし、いつも鬱陶しいくらいに大事に扱うし……っ」
照れ隠しのように弁明すると、ガイルは呆れたみたいに笑う。
「まぁ、あんだけベタ惚れだとそうも思うよなぁ。絆されたってやつか」
「それだけじゃないけど……」とぼそぼそともらすと、「へぇ?」と意地の悪い顔で見られたから。
「恋をしろって言ったのは、ガイルでしょ」としかめた顔をぷいっと逸らした。