王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「先日の暴動は大変でしたね。城の前にあんなにもたくさんの人間が詰め寄せるなんて……グランツ王国始まって以来でしたわ。やはり、国が違えば民度も変わるものなんですね」

テネーブル王国と、その平民を馬鹿にしたような発言だった。

ラモーナ王妃の表情から、意図的に挑発しようとしているのは見て取れたけれど、ぐっと耐える。
グランツ王国に迷惑をかけてしまったのは本当だ。

「申し訳ありませんでした」
「いえ。私には関係ありませんから」

謝れと言わんばかりの態度だったのに、ピシャリと言われ、下げた頭がなかなか上げられなかった。
頭を下げることにはそこまでの抵抗を感じなかったけれど……それを受け入れてもらえないことに悔しさがじわりと滲む。

でも、これも仕方ない。
シド王子みたいに好意的に受け入れてくれる方がおかしいんだ。

ラモーナ王妃の態度が特別意地悪というわけではないんだろう。

「それでも、お騒がせしてしまったので。申し訳ありません」

再度謝ってから頭をあげると、ラモーナ王妃の暗い茶色の瞳が、無表情に私を見つめていた。

「なんだか、あなたがここにいるという噂が広まりああいった騒動になったようですが。その犯人探しはなさったのかしら」
「……いえ。ですが、私がここにいることをよく思わない方はいらっしゃるでしょうし、私自身、そう思う気持ちもわかります。なので、見つけ出し責めるつもりもありません」

今、ラモーナ王妃が言ったことは、シド王子も気にかけていたことだ。そして、私も。

私がここにいることを知っている人は限られる。いったい誰が外部にもらしたんだろうって。

だから、シド王子も犯人探しをしようと言ったけれど、私が断った。
もう解決した以上、その必要はないと。

思った通りに話すと、ラモーナ王妃は尚も表情を変えずに言う。




< 130 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop