王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


子どもを思う気持ちは、分からなくはない。

シド王子はラモーネ王妃の言うように、王位なんてものがなくても実力と人柄で兵士にも国民にも愛される。
ラモーネ王妃の子はそうじゃないってことなんだろう。

でも……。

「お気持ちはわかります。でも、だからってシド王子を追い詰めようとするのはやり方が違う――」
「今日は、取引を持ってきたのよ。その話をしましょう。時間もないわ」

私の言葉を遮った声からは、さっき一瞬見えた感情は消えていた。

最初、この部屋に入ってきたときのような無機質な声に押し黙る。

日中だっていうのに、太陽に雲がかかり明かりのついていない部屋は薄暗かった。

「私に手をあげたこと、許してさしあげるわ。ただし、私の出す条件にあなたが従ってくれれば、だけど」
「……条件はなんですか?」

慎重に聞くと、ラモーネ王妃は一拍黙ったあとで「あなたには、ここを出て行ってもらう」と告げた。








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