王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「ダメ?」
心臓を撃ち抜かれたのは私の方だと文句を言ってやりたいほど色気を漂わせた目元を、見ていられなくなって目を逸らす。
「……誰にもバレないように来てくれるなら」
周りに知られてしまったら恥ずかしくてたまらない。
だから言うと、シド王子は「まかせて」と笑い……私の髪に唇を寄せた。
その日、案内してもらったのは、以前話題に出ていた温室だった。
日当たりを考えて四方の壁がすべてガラスでできている室内は温度調整されているのか、外よりもわずかに温かかった。
「今は温度調整はしてないよ。風だけ防いであげれば太陽の光だけで温度が上がるんだ。小さな空気口はあるけど、基本的にここの扉は締めっぱなしだから」
シド王子に言われ、なるほど……と感心する。
中庭と同じように四角く区切られた花壇には、色んな花が咲いていて鮮やかな色が目を引く。
そのひとつひとつに見とれながら歩いていると、シド王子が紫色の花の前で足を止める。
花びらが大きく、葉っぱが黄緑色をした花だった。
しゃがんで眺めていると、手では触れないようにと言われ不思議になってシド王子を見上げる。
「この花は、見た目は綺麗だけど、実は葉に毒があるんだ」
「え……」と驚いて見上げると、花を見ながらシド王子が言う。
「触れるくらいなら問題ないけど、この葉を煎じて口にすると命を落とすほどの毒になる」
「……そんな花を、なんで温室で育ててるんですか?」
わざわざ風から守りながら育てる花には思えずに眉を寄せると、シド王子は「クレアの言ってることもわかるよ」と、微笑んだ。
「でも、解毒剤を作るためにはまず、この毒を研究する必要がある」
「あ……」