王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「ありがとうございます。大事にします」
改めてお礼を言うと、シド王子も上半身を起こし私の肩を抱き寄せる。
「喜んでくれてよかった。たまたま見かけて、クレアが気に入りそうだと思ったんだ。……ああ、やっぱりこのページ見てたんだ。マーガレット」
私が開いていたページに描かれているのは、白いマーガレットだった。
「はい。これ、図鑑というより花言葉の本なんですね」
「ああ、だから写真じゃなくてイラストだったんだ。マーガレットの花言葉は〝心に秘めた愛〟〝誠実〟か……。クレアによく似合ってる」
にこりとされて「そうでしょうか」と首を傾げる。
「クレアは誠実に想える心を持ってるから。心に秘めた愛が深すぎて、自分より相手を守ることに必死になりすぎるところがあるけど」
タイミングよく言われ、ドキリと胸が跳ねる。
だから、それを誤魔化すように「そこまで想う相手は限られますけど」と笑みを浮かべると、突然ベッドに肩を沈められた。
見上げると、シド王子が私を組み敷いていて目をパチパチとしばたたかせる。
「なんですか……?」
「その〝限られた相手〟のなかに、俺は入ってるって思ってもいいの?」
口の端を上げながら聞くシド王子に、「今さらですね」と呆れて笑う。
「誰にでも肌を許す女だと思われていたなら、心外です」
「まさか。クレアはそんな子じゃない」
近づき、おでこにキスしながら言うシド王子をじっと見上げる。
あまりに見つめ過ぎたからか。
「クレア?」と不思議そうに聞くシド王子に、ゆっくりと口を開いた。