王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「誠実かどうかはわかりませんが、私は一度想ったらたぶん、一途です」
手を伸ばし、シド王子の頬にそっと触れる。
愛しくてたまらない、シド王子に。
「だから、この身体を開くのは、生涯シド王子だけです」
言い終わるや否や、驚きを浮かべていたシド王子の表情が切なそうに歪み、勢いよく唇を奪われる。
こんなに荒々しいキスは初めてだったけど、なんとか受け入れていると、気が済んだのかシド王子が少しだけ距離を作る。
鼻先がぶつかるくらいの至近距離から見つめてくる瞳が、ベッドサイドからの照明を受けキラキラと光って見えた。
青い瞳がとても綺麗だった。
「どうしたの? 急にそんなこと言って」
「……どうしたんでしょうね。なんとなく、伝えておきたくなったんです」
見つめながら言うと、シド王子は「そっか」と呟き私の前髪をかきあげるようになでる。
「でも、そんなこと言われたら男は止まれなくなるってことは覚えておいた方がいいよ。今後のためにも。もっとも、今日はもう遅いけど」
ちゅっちゅっと啄むようなキスをされ、シド王子の首に手を回した。
「ん……覚えておきます」
どうせ、この人からもらった言葉なら、どんなものでも忘れることなんてできない。
胸に抱きしめたまま離せないから。
ゆっくりと形を確かめるように動く指先に、大きな手のひら。
形のいい唇に、熱い舌。
逞しい肩に触れるのが好きだった。さらさらした黒髪を撫でるのが好きだった。青い瞳に見つめられ……微笑まれるのが、好きだった。
この人の……シド王子の全部が、大好きだった。
「クレア……っ、好きだ……」
数えきれないほどのキスと一緒に落とされる言葉に、涙が溢れる。
溶けだし、なにも分からなくなった中、シド王子に贈られた本がカタンとベッドから落ちた音がした気がした。