王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「やめて……っ」
急に外に引きずり出されたせいで、突然の眩しさに目がくらむ。
それでも腕を掴む手をどうにか剥がそうとしたけれど、力が強くて離せず、焦りが浮かんだ。
外に出た衝撃で、シド王子にもらった本や、握りしめていたハズの小瓶が地面に次々に落ちる。
それを誰かの手が拾うから、奪い返そうとすると、掴まれたままの腕が止めた。
「離して……!」
何人いるのかすらわからず、ドッドと心臓が異常なくらい速く動いていた。
確実なのは私を後ろから拘束している男と、本を拾っている男のふたりだけど、それ以外にもいるの……?
「それに触らないで……っ」
叫ぶように言いながら視線を上げて……頭の中が真っ白になった。
だって……そこに立っていたのは、知りすぎている人だったから。
「ガイル……」
本と小瓶を拾い上げたのは、ガイルだった。
珍しく真面目な顔をしたガイルが、ギリッと表情を歪め、小瓶を見つめる。
「おまえ……これがなにか分かってんのか?」
絞り出したような声に問われ、胸が掴まれたみたいに痛んだ。
声と表情で分かる。
ガイルは、瓶の中がなんなのかをわかってるんだ……。
なんで知っているのかっていう疑問も追って沸いたけれど……ガイルの悲痛な表情にどうでもよくなる。
身体から力が抜けると、抵抗を諦めたと気付いたのか、後ろから拘束していた手がわずかに緩む。
それでも放す気はないようだった。
痛くない程度に掴まれたまま、ガイルに聞く。
「なんでここに?」
ガイルは、小瓶を手で握りしめながら答える。
その表情はまだ険しさが残っていた。