王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「やめて……っ」

急に外に引きずり出されたせいで、突然の眩しさに目がくらむ。
それでも腕を掴む手をどうにか剥がそうとしたけれど、力が強くて離せず、焦りが浮かんだ。

外に出た衝撃で、シド王子にもらった本や、握りしめていたハズの小瓶が地面に次々に落ちる。
それを誰かの手が拾うから、奪い返そうとすると、掴まれたままの腕が止めた。

「離して……!」

何人いるのかすらわからず、ドッドと心臓が異常なくらい速く動いていた。
確実なのは私を後ろから拘束している男と、本を拾っている男のふたりだけど、それ以外にもいるの……?

「それに触らないで……っ」

叫ぶように言いながら視線を上げて……頭の中が真っ白になった。
だって……そこに立っていたのは、知りすぎている人だったから。

「ガイル……」

本と小瓶を拾い上げたのは、ガイルだった。
珍しく真面目な顔をしたガイルが、ギリッと表情を歪め、小瓶を見つめる。

「おまえ……これがなにか分かってんのか?」

絞り出したような声に問われ、胸が掴まれたみたいに痛んだ。

声と表情で分かる。
ガイルは、瓶の中がなんなのかをわかってるんだ……。

なんで知っているのかっていう疑問も追って沸いたけれど……ガイルの悲痛な表情にどうでもよくなる。

身体から力が抜けると、抵抗を諦めたと気付いたのか、後ろから拘束していた手がわずかに緩む。
それでも放す気はないようだった。

痛くない程度に掴まれたまま、ガイルに聞く。

「なんでここに?」

ガイルは、小瓶を手で握りしめながら答える。
その表情はまだ険しさが残っていた。


< 152 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop