王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「それに、クレアがどういう行動にでるかは何通りも考えておいたし備えていたから問題ない。そもそも、これは毒の葉じゃないしね」
「え……?」
だって、昨日シド王子が毒の葉だって教えてくれたのに……と思い見上げると、困り顔で微笑まれた。
「こうするんじゃないかっていうのも考えの中には入ってたから、昨日、わざと違う花を教えた。万が一、口にしても問題ないよ。ハーブの味がするかもしれないけどね。嘘ついてごめん」
「おまえ……そういうことは早く言えよ。俺にも毒だって言ったじゃねーか……」
はぁー……と肩から力を抜いたガイルに、シド王子が笑う。
それから私を見て……苦笑いを浮かべた。
「クレアのそういう部分はこれから時間をかけて直していくつもりだし、問題ない。……必要ならお仕置きもするかもしれないけどね」
最後の部分だけ声の色が変わった気がして、背中をぞくっとなにかが走った。
後ろから抱き締められている今の状態がなんだかとても危険な気がして、ゆっくりと口を開く。
そもそも、今はこんな話をしている場合じゃない。
「……離してください」
「離さない」
即答され、顔をしかめた。
シド王子だってわかっているはずだ。私が考えたことは間違っていないって……逃げようのない現実だって。
ラモーネ王妃に手をあげたことは、責任をとればどうにかできるかもしれない。
でも……私の生い立ちについてはどうにもできない。
ガイルだって、今の説明でそれがわかったからなにも言えないでいる。
向かいに立つガイルが、悔しそうな顔で黙っているのを見て、目を伏せた。