王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「今だから言うけど、俺は他の王族はどうでもいい。強欲で意地汚く、自分たち以外の人間なんかなんとも思ってないヤツらなんかどうでもいいし、俺だっておまえに仕えてなければ革命派の主流メンバーとして先頭切って城に攻め入っていたかもしれない」

「だったら、今からだって……」
「でも、おまえは他のヤツらとは違う。他の王族にひどい扱い受けても、挙句、こんな場所に閉じ込められても文句も言わずに、国民を見下すこともしなかった。国は、おまえの血筋がどうのって言うけど、俺にとってはおまえが一番品格のある王族に見えてた」

ふっと、少し恥ずかしそうに笑われる。

ガイルからこんな褒め言葉をもらうのは初めてだったから、こんな時なのに、私も息が抜けてしまう。

なんで今、そんな話……と口を尖らせる。
じわっと涙が浮かんでしまっていた。

「買い被りだよ。それにいくら心配したところで、結局なにもできなかったなら、なかったも同じだし」

王宮を囲っているであろう、人々の声がどんどん近づいてきている気がした。

いつ誰がここに現れてもおかしくない、緊迫した状況だっていうのに、不思議とそこまでの恐怖はなかった。
ガイルがそういう雰囲気を作ってくれているからかもしれない。

窓の外では、太陽が地平線に姿を隠そうとしているところだった。

もうすぐ日が暮れる。

「そうでもないだろ。おまえが毎朝窓から落としてたパンで命を繋いでた子どもだっているんだから」

突然言われた言葉に、目を見開く。
気付かれてるなんて思わなかったのに……。

「……知ってたの?」と呟くように聞くと、ガイルは鼻で笑う。

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