王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「こうなることを見越して、グランツ王国の城にいるヤツらからもクレアの姿は極力隠していた。俺が信頼を置いているヤツしかクレアを会わせていないし、俺に異常に執着してクレアの存在に気付いたラモーネ王妃は黙らせるだけのネタがある」
「ネタ……?」
脅して黙らせるだけのことを、シド王子は掴んでいるってこと……?と思っていると、シド王子が口の端を上げる。
いつもは見せないような、少し悪い笑みだった。
「今まで俺にしてきたことの証拠とかかな。潜り込ませてた使用人が色んな証拠を持ってきてくれたから、たぶん、あと百年くらいだったら黙らせることができる」
「百年……」
「ああ、でもクレアが殴ったぶんを差し引くと五十年くらいがいいとこかな」
冗談みたいにからかわれ、「そこまでボコボコにはしてません」と口を尖らせる。
そんな私にシド王子は楽しそうに笑い「とにかく」と話を戻した。
「クレアが心配していたことは、これでほとんどなくなったハズだ。あとは……ああ、理由も告げずにあの部屋に幽閉していたことも、今なら説明できる」
そういえばそうだった。
シド王子はなんであそこに私を……と、当初抱いていた疑問を思い出すと、シド王子が説明してくれる。
「俺はクレアを婚約者として迎え入れたかったけど、色々事情もあるし、父親である国王に相談してからじゃないと決められなかった。だから、まだ離れた場所にいる国王に文書を出したんだ。
事情はあるけどどうしても迎え入れたいからその許可が欲しいって」
『まぁ、簡単に言うと、今、グランツ王国の国王が留守なんです。この国の南側に大きな砦と作る計画があってその視察や他の公務のため、帰還するのはまだ十日ほど先の予定です』
ジュリアさんが話していたことを思い出していると、シド王子が続ける。